雑駁記——藤沢図案制作所——

ざっぱく【雑駁】(名・形動) 雑然としていて、まとまりのないさま。「_な知識」「文明の_なるを知らず、其動くを知らず」〈文明論之概略諭吉〉

西宮の酒蔵通り

去る4月1日に、西宮市が中核市に移行したそうです。正直、なんかよくわからんのですが、住民としては、いくつかの手続きや届けの際に、県庁まで行かずに市役所で処理してもらえますよというのが一番大きな違いなんでしょう多分。
で、その中核市移行を記念して、今年の「西宮さくら祭り」において発売されたのがこのお酒です。
「西宮さくら祭り」というのは、桜の名所でもある夙川公園沿いを中心に、毎年にぎやかに行われております。まあ、出張阿波踊りやジャズライブと桜にどんな関連があるのかはおいといて。
さて、西宮市には大手の酒造メーカーが酒蔵通り沿いに点在してます。また、灘酒の肝のひとつでもある「宮水」発祥の地ということもあり、西宮と言えば日本酒なんであります。ただ、大手なもんで、「地酒」とか「特産品」とか言おうにも割とどこでも気軽に買えてしまうのが痛し痒しのような気もしますが。

 
ただ、これに関しては酒蔵通り沿いの大関、宝娘、日本盛、白鹿、白鷹のそれぞれのショップもしくは直売所、または西宮市内のいくつかの店舗でしかお求めいただけないようです。ラベルは一緒なんだけど中身は各蔵で違うというのが少々ややこしいですね。ただ、いずれも吟醸とか純米とかの特定名称酒なので、ちょっとがんばって全酒そろえて飲みくらべてみるのも一興ではないでしょうか。ちなみに500ml詰で1,000円だそうです。
で、まあ、今回ご縁がありまして、このお酒のパッケージのデザインをさせていただいたわけであります。開きにするとこんな感じ。

当初いただいたオーダーとしては、「さくら祭り」とのかねあいもあるし、西宮を象徴するものとして、桜(市の花なんだそうな)と夙川、甲山をモチーフにしてほしい、それと「中核市移行」をどこかに表記してほしい、といったもの。ただ、中核市移行については、そのせいでお堅い感じにはしたくないなあ、とのお話もありまして。
とりあえず考えたのは、「酒蔵通りと名のる以上、酒蔵通りもモチーフにしたほうがいいんじゃないか」「お祭りの場に出るものだから、お酒に詳しい人より、むしろお酒にそんなに詳しくない人に興味を持ってもらうものの方がいいんじゃないか」「中核市の詳細はともかく、目出たい話には違いないんだから、明るい雰囲気のラベルの方がよかろう」といったものでした。
そんなこんなで出来たのが上のラベルです。
吟醸酒純米酒の場合、中身のお酒の質を一番の訴求点にして、和紙風のラベルにカリグラフィ、みたいな伝統的なあしらいが常套手段なんですが、今回は中身のことはあえて無視して、モダンで明るく、でも日本酒だから伝統的な要素も少々、みたいな線を狙ってみたつもりでした。「西宮の名所を見せる意味でも、桜の季節の夙川公園の写真を使ってはどうか」というご意見もありましたが、明るさを出すにはイラストの方が良かったと思ってます。画面センターの橋が、夙川と酒蔵通りの交わる翠橋です。ちなみに夙川の写真ではなく、イラストにしたのは、この橋と甲山を一枚の写真に収めようとしても、良い絵の撮れるポイントが無い、という消極的な事情もあったりします。
しかしまあ、こういうネタはお祭りのタイミングに合わせて書かないと、なーんも意味ないですね。
 
5月7日追記
「後天性無気力症候群」というblogによると、なんでもこのお酒のパッケージイラスト、「涼宮ハルヒの陰謀」というライトノベルの中で「キョンが駆け回る範囲を見事にカバーしている」のだそうです。さっそくwikiを見てみたら、作者の谷川流(「ながる」って読むんだって)さんという方、やはり西宮のご出身だそうです。ということで、ハルヒファンはこのお酒、ぜひ飲んでくださいね。