雑駁記——藤沢図案制作所——

ざっぱく【雑駁】(名・形動) 雑然としていて、まとまりのないさま。「_な知識」「文明の_なるを知らず、其動くを知らず」〈文明論之概略諭吉〉

日本盛 「旬のしぼりたて」セット って今さらお中元の話

このところやっと秋めいてきたかなあと感じるんですが、なんでも、百貨店では今日からお歳暮商戦がはじまったそうです。ほぼ隔年で、お歳暮商品のデザインやってるんで、夏に年末年始の話をするなんてのは仕事としては普通なんだけど、いち消費者となると、やっぱ「ちょっと気が早いんじゃないの?」と思わなくもないですね。
とはいえ、これから日々涼しくなって、あげくに寒くなるのはあったりまえの今日このごろ。久々の更新はお中元ネタです。写真は暑い盛りに撮ってたんですけど、いろいろとありまして。で、こんなタイミング外しまくった頃合いにアップするのもさすがになんだかなあと思うんですけど、まあ、せっかく撮ったし。来年はこの商品、無いかもしれないし(いや、知りませんよ)。
 

 
日本酒を見慣れた人の方が「あれ?」っと思うかもしれませんが、これ、瓶がちょっと珍しい。ワインボトルみたいに直線部分が多い形になってます。で、実は容量も既存の720ml(いわゆる四号瓶)より少なめの600ml。お酒好きな人にはもの足らないかもしれないけど、家で夫婦二人でちょっと晩酌という分には、これくらいがちょうど良い飲み切りサイズではないかと思います。
スリムだし、透明瓶ということもあってなかなか清涼感のあるいいボトルなので、夏のギフトに向いてるなあと思ったんですけど、いざラベル考えるとなると、なかなか難しいんですねこれが。

この仕事を難しく感じさせた一番の理由は、僕が既存の日本酒のフォーマットから抜け出し切れなかったことに尽きると思います。
ホント、瓶のシェイプがちょっと変わるだけで、いわゆる「日本酒のラベル」が、妙に合わないのですね。
 

 
で、最終的には、ハイピカE2シルバーというホイル系の紙にグラデーションをひいて、風のような水の流れのようなラインと浜千鳥や青海波をあしらった、ご覧のようなビジュアルになりました。この時節に言うのもなんですけど、これはこれでなかなか涼しげだと思います。
 

 
ただ、正直なところ、このボトルに対して、ラベルのビジュアル、サイズ、貼る位置などなど、これが正解だとは思ってないんです。これ、もっといい商品になったと思うんですよ。
大げさかもしれないけど、もしかしたらこのデザインをすることで、少なくとも僕の中にある「既存の日本酒のフォーマット」を壊してくれたかもしれなかったのに、なんかそこまで行き切れてないというか。
もちろん、日本酒って商品と、「伝統」というイメージは切っても切れないところがあって、徒にモダンなグラフィックをあしらったところで木に竹を接いだ感になってしまうのもよくあることなんですけど(不思議なことに、焼酎って、伝統破りみたいなことしたパッケージ見ても違和感ないんだよな)。
でも、ガラスのボトルに酒入れて売るなんて販売形態って、たかだか100年もたってないし、今日見るお酒のラベルの基本形なんてせいぜい60年くらい。そんな中で、実際ワンカップ大関に代表されるカップ酒とか、紙パックなんかは、いわゆる日本酒のイメージから乖離してるものもあるし、またそれが定着もしてるわけです(とは言え、もう10年以上前、月桂冠から出た「THE CUP 200」というカップ酒のそのワンカップ大関以上にモダンなデザインに当時我々はのけぞったのですが、いつの間にやら一升瓶に近いオーソドックスなビジュアルのラベルに変わってたときは、「やっぱ酒のイメージってそんなもんかな」と思ったりもして)。
というわけで、この商品、もっといいデザインにしたいんで、リニューアルの機会がありましたら、ぜひともお声をかけてください(笑)。
あ、お酒じたいは、すっきりしててとっても飲みやすいです。親しい方への贈り物に、ぜひどうぞ(遅いって)。