雑駁記——藤沢図案制作所——

ざっぱく【雑駁】(名・形動) 雑然としていて、まとまりのないさま。「_な知識」「文明の_なるを知らず、其動くを知らず」〈文明論之概略諭吉〉

Fender Coronado 2


 
歴史に埋もれたフェンダー・ギター。1967年製だそうで、同い年ということになります。
60年代後半、創始者レオ・フェンダーの去ったFenderCBSの傘下となり、かたやGibsonもテッド・マッカーティが去り新体制となり、両社とも新たなステージになりました。とどのつまりは、後に品質が低下したと悪評紛々の70年代への助走とも言えるかもしれないけど。
ともあれこの時期、Fenderは生産効率を上げていく一方、ラインナップの充実も図っていたようで、テレキャスター・タイプのシンライン('68年)とほぼ同時期、LTD、Montegoといったホロウ・ボディのモデルを何種類かリリースしてました。
ただ、Fender社内ではソリッドボディをルーティングするシンラインはともかく、フルアコセミアコ構造のボディを作る設備もしくは技術がなかったようで、いずれのモデルも他社製のボディに自社のネックを取り付けたものをFenderブランドとして出していたそうです。
 

1966年に発表されたCoronadoは、ホロウ・ボディのラインナップの中でも比較的ポピュラーなモデルで、中古市場でもときどき見かけられます。カバーにFenderロゴの入ったピックアップも中身は他社製で、ディアルモンドで有名なロウ製のシングルコイルが使われています。
1ピックアップの1、2ピックアップの2(いずれも正しくはローマ数字)、12弦モデル、トレモロ付きモデル、さらにはベースにも展開されていたそうです。
塗装のバリエーションもあって、ワイルドウッドやアンティグアなんてのがよく知られてます。これだけ力を入れたにもかかわらず、'70年には生産終了になってるってことは、よほど売れなかったのでしょう。
ちなみに1ピックアップのCoronado 1はJacks時代の早川義夫が使ってました。「割れた鏡の中から」とか「マリアンヌ」のコードストロークはCoronadoの音なのでしょうね。
 
 

早川義夫が使ってたからってわけじゃないけど、このコロナドというギターの存在は以前からちょっと気になっていました。
だってFenderのヘッドにセミアコみたいなボディって、とりあえず変じゃないですか。そのビザール臭い変な感じがいいなあと。
そうは言っても、そうそう積極的に探すほどのものでもないし、めちゃくちゃ欲しいとも思ってなかったんですが、まあ、たまたま安かったこともあって(中古相場の6割くらい。でもぶっちゃけそれでも高いギターだと思うけれど)、最近めっきり弾かなくなったES335とL-6Sを下取りに(泣)入手してしまいました。
考え直さなくたって335の方がずうっといいギターです。そんなことわかってます(泣)。
 
 

試奏したときの第一印象は、以前持ってたHarmonyのRocketってギターに似てるなあ、ということ。
Harmonyのこの手のギターもホロウ・ボディーにデタッチャブル・ネックで、構造が同じなんですね(て言うか安物のフルアコとかシンラインなんて大抵そんなもんだが)。だから重さのバランスなんかも近い感覚なわけです(ちなみにヘッド落ちとかもなく、これはこれでバランスとれてます)。加えてピックアップセレクタの位置も同じ。
「もしかしたらボディはRocketなんじゃないのお?」と、店員さんとも冗談まじりで言ってたんですが、一概に冗談とも言えなくて、ボディはどうやらHarmonyで作られてたようです。
実際、Fenderのネックのしっかりした感じと、Harmonyのペナペナ感の混じった、不思議な弾き心地。Gibsonセミアコみたいな安定感は微塵もありません。この辺りのことは、良い悪いじゃなく、好き嫌いの問題でしょう。
ちょっとフレットが減り気味なのが、購入後に気になりだしたところであります。