雑駁記——藤沢図案制作所——

ざっぱく【雑駁】(名・形動) 雑然としていて、まとまりのないさま。「_な知識」「文明の_なるを知らず、其動くを知らず」〈文明論之概略諭吉〉

王蟲とナウシカ その1

静岡ホビーショーというか、モデラーズクラブ合同作品展てのは、全国のモデラーのお世辞抜きに素晴しい作品達を一気に見られるわけで、模型趣味者としてはすっごく刺激を受けるイベントではあるのだけれど、反面、寂寥感のようなものを感じるのも事実です。
すなわち「こんだけすごいモデラーがいるのに、自分のクオリティのなんと低いことよ」と。決して謙遜してるとか卑屈になってるとかそういうことじゃなくて、例えば感銘を受けた作品を見たときに「すげえ!上手い!カッコいい!!」みたいなコーフンと「ここまでやるか!負けたあ…」みたいなやられた感が同時に来るというか。技術とか、見せ方とか、ちょっとしたアイディアとか、なにより楽しんで模型作ってる感じ。良くも悪くもあてられるわけです。
そんなこんなで「来年はこんなの持って行こう」とか「今度はあんなこと挑戦してみよう」とかいろいろ思うわけですが、静岡から帰ってきて何日か経ち、少々そのコーフンもおさまってくると、あれやこれやと膨らんでいたチャレンジングなプランも、しゅるしゅると現実的な目標に収束していくわけで、つまり、「まずは未完成品を一つでも完成させよう」。
 
で、アフター・ザ・静岡、はじめに手をつけたのが王蟲なんであります。
ところで、僕は宮崎アニメとスター・ウォーズは観ない人です。「嫌い」なわけじゃなくて、「観ない」だけです。それも「誰が観るもんか」と特に頑になってるわけじゃなくて、たまたま観る機会を逸して現在に至ってしまい、今更積極的に観る事もなかろうってだけのことです。単なる巡り合わせで、観てないだけです。
念のため書いときますけど、「雑草ノート」と「泥だらけの虎」は大好きだし、それらを読んでもつくづく才能豊かな人だと思います。唯一ビデオで観た「もののけ姫」はイマイチだと思ってるけれど。
ともかく、僕はこの巨大な蟲が登場するアニメ映画も観たことがありません。原作漫画も未読で、すなわち、どんな話かほとんど知りません。「ナウシカ」と聞いても、仮面ノリダー奥さんのへったくそな歌(しかもサビのみ)が頭の中でリフレインするのが関の山です。
にもかかわらずキットはしっかり持ってて、この「王蟲ナウシカ」のみならず「カイに乗るナウシカ」「メーヴェナウシカ」「風の谷のガンシップ」もいくつかパーツを切り出した状態で数年放置しております。しかも改修されたバンダイ版ではなく、旧式のツクダホビー版を。
 
長い前置きになってしまいました。 
 
いつか作ろうと思いながらほおっておいたこのキットですが、K2Cメンバーの腹ペコさんがちょっと前から「メーヴェとナウシカ」の製作をはじめられていて、その製作記を見てなんとなしに積みプラの中からナウシカのキットをずるずると引っ張り出したのが、王蟲に手をつけるきっかけです。でもって、先日のK2Cの例会で酔った勢いで「二人ナウシカ祭りやろう」と言ってしまったため、この際だから完成させてみようということに相成ったわけです。
 
なにしろ古いキットですから、その出来についてどうこう言っても仕方ありますまい(特にナウシカさんのフィギュアはなんともかんとも)。その上近年バンダイよりほぼ全面改修と言ってよいかたちでリイシューされたようですが、そりゃ改修しなきゃ再販かけれんわなというブツでして、ここは下手に作り込みなどせず、さっさと組んで塗装をチマチマと楽しむべきだろうと思ったのでした。
 
ところが、上の完成写真見ると判る人には判るんだけど、王蟲ってこんなにムカデみたいに全体にわしゃわしゃ脚ついてないんだってさ。
「変身したグレーゴル・ザムザ*1ってこんな感じだったのかなあ」などと思いつつ、ストレート組みよろしく全ての脚をインスト通り接着した後に、嫁さんに指摘されて気づく次第でした。ともかく、ネットで画像をいくつか見たところ、どうも脚が出て見えてるのは上半身(?)のみらしいということで、せっかくくっつけた脚を全部引っこ抜いて、身体全体を反り身にさせるため何カ所かでぶった切って再接着後、脚をつけ直しました。

最前面にわしゃわしゃとつけた脚は、これも多すぎるのですが、この王蟲、画像と見比べると全体のバランスがそもそもおかしいし、そんなのなおしてたらまたいつ完成するかわかんなくなるから、ここで妥協しました。とりあえず王蟲は組立完了です。
 
 
 
さて、お姫さまの方ですが、まあなにしろ古いキットですから(以下略)。とりあえずモールドの甘いところを彫りこみました。
問題は頭です。まず髪が異様にボリュームあるので削ってボリュームを押さえます。で、顔ですが…なんか東南アジアの人みたいだったんで(うーむ、もとの写真撮っとくべきだったな)、ひたすらパテを盛り削り。にもかかわらず全然似てないどころか、左右対称にすらならない。「もっと可愛く」なんて望むべくもありません。もうこの辺りは僕の経験値と技術的問題なので、この作業もここらで妥協することにしました。
 
そんなこんなで、ちょっと前から始まってたけど全然アップできてなかったナウシカ祭り。完成目標は次回のK2C例会、つまり今月末です。できるかなあ。

*1:「え?」っと思われた方へ。新潮文庫の「変身」を読んだのは十代の頃のことで、その時の主人公の名前は「グレゴール・ザムザ」でした。だから僕はホントはその方が馴染み深いんですけど、昨年、光文社古典新訳文庫版で読み返したときに「グレーゴル」と書かれていて、あれっと思ったのでした。数年前に出た白水社版も同様です。なんでも原音に近いのは「グレーゴル」の方だそうで、新潮文庫版も随分前に「グレーゴル」表記に改められたそうです。