雑駁記——藤沢図案制作所——

ざっぱく【雑駁】(名・形動) 雑然としていて、まとまりのないさま。「_な知識」「文明の_なるを知らず、其動くを知らず」〈文明論之概略諭吉〉

日本盛 完熟梅酒 (日本酒ぶれんど & 無濾過原酒)


 
ひさびさのお酒のラベルデザインです。
商品の詳細はこちら。
 
オリエンテーションの時点で、担当の方がビジュアルイメージの方向性を持ってらっしゃったので、基本的なビジュアル案はさほど苦心することなく提案できました。
「和風レトロで、雑貨っぽくて、可愛いかんじ」ってとこでしょうか。言葉にすると、なんかアレですけど、ともかくそんな方向のもとで、3案2アイテム分・計6点をまずつくってみました。通販専用商品なのでラベルのビジュアルで購買の訴求を強く意識しなくてもよいということもあり、(嫌いな言葉なんですが)遊びの要素もちょっと入れてみたつもりです。
 

こうして見返すと、いずれも普段着っぽい着物の柄に見えなくもないですね。
(こちらの都合で、少々画像を見にくく加工しております。ご了承ください。)
 
初回提案後、「やはりオーソドックスなお酒のラベルとしての方向も見当するべきではないか」といったご意見があがってきました。大袈裟な言い方をすると「ビジュアルコンセプトの再検証」ってところでしょうか。
そこで、商品名の「完熟梅酒」の「完熟」をキーワードとしてカリグラフィの作成を依頼。初回提案分とはイメージの異なるシンプルなお酒のラベルを作成、比較・検討していただくことになりました。
結果としては、始めに出した方向のものをつめて行くかたちで最終デザインになったわけで、カリグラファーさんには申し訳なかったのですが、商品としてはこちらのデザインの方が良かったと思っています。
 

これはこれで良いラベルだと思います。
ここで依頼する側が大変なのは、デザインの善し悪しとか好き嫌いとかで選択・決定するのではなく、どの方向性で売り出していくか、また、それがちゃんとビジュアライズされているのはどれか、で判断しなくてはならないということです。
これはどんなジャンルであれ、デザインを進める際に基本的かつ大変重要なことです。コンセプトを踏まえないまま、場当たり的に修正依頼を重ねられても、決してデザインが良くなることはありません。もっと言えば、コンセプトの希薄なままデザインを依頼されても、こちらとしても的確な提案は困難なものとなります。
(なお、この画像も、こちらの都合で少々見にくく加工しております。ご了承ください。)
 
制作するにあたって気をつけていたのは、「手作り感」です。本当なら全ての要素を手描きで作成して、出稿は紙の版下でできたらよかったのですが、なんでも専用の製版フィルムの製産が終わっていて、市場在庫も底をついているのですと。
ともあれ、シャープに、クリアになりがちなデジタルの工程のなかで、テクスチャを重ねたり、レイアウトを意図的にずらしたりして、雑味というざらつきのようなものを加味していったつもりです。そうすることによって商品の「完熟」とか「無濾過」といった要素を感じてもらえまいか、と。
 

 
ひとつ残念なのは、最終的に印刷した紙がコート紙(表面がつるつるの紙)になってしまったことです。
これは当初提案していたようにマット紙(ざらざらの紙)の方が雰囲気が出たでしょう。ただ、出稿前にカンプを作る際に、当方のプリンタでは仕上がりのイメージをきちんと表現できなかったため、発色の良いコート紙が選択されざるを得なかったのかもしれません。この点については、せめて二通りの色校正を出してもらうよう、強気の態度に出てもよかったかもしれません。
 
ともあれ、食前酒として、もしくは寝る前にちょこっとだけ、のんびりしながら飲んでもらって、その時にちらっとでもラベルに目を向けてもらえたらいいなあと思います。この機会に、完熟の南高梅からつくられた梅酒を味わってみてください。←って宣伝かよ。
 

注文するとこの箱に入って届けられます。うーむ、通販担当の方とも言ってたんですけど、この箱はちょっとなあ…。