雑駁記——藤沢図案制作所——

ざっぱく【雑駁】(名・形動) 雑然としていて、まとまりのないさま。「_な知識」「文明の_なるを知らず、其動くを知らず」〈文明論之概略諭吉〉

日本盛 2007年お歳暮商品


 
たまにはデザイナーらしいネタを。
今さら去年のお歳暮の話してもしょーがない気もするのですが、ともかく日本盛さんの昨年のギフト商品のデザインをさせていただいたので、遅まきながらご紹介です。
 

 
720ml、3本セットで希望小売価格5,000円と、ちょっと高めの商品なので、価格なりの顔にしてみたつもりです。
 
デザインするときに、まず担当の方と話したのは「お酒に詳しくない人にも興味持ってもらえないものだろうか」ということです。というのも、吟醸酒とか純米吟醸とかの高めのお酒って、その酒質とか、原材料として良いお米(「山田錦」とか見たことあるでしょ?)つかってますよ、といった「中身をシンプルにアピール」というのが定石なのですね。そりゃ品質が良いのだから、それを強く打ち出すというのは、デザインとしても当然のことです。
ただ、思うのですけど、それほどお酒に詳しくない人にとって、酒質とか酒米ってアピールするに足る情報なのかな、という疑問というか、不安も感じないわけではなくてですね。たとえば「吟醸酒純米酒、どっちが偉い?」とか「山田錦と五百万石、どっちが強い?」とか、わかります?正直、僕は尋ねられても答えられません。
なので、ここはひとつ、高価格帯商品でありながら「酒のことはよくわからないけど、まあ綺麗だから贈り物にはよさそうじゃん」みたいなところを狙ってみようと考えたわけです。
 

 
グラフィック的な元ネタは、まあ言わんでもわかると思いますが、尾形光琳の「紅梅白梅図」です。1本ずつでも見られて、3本でもひとつの絵になるように、なんて考えてこさえてみたわけです。とはいえ、左右にそのまま梅を持ってくるのはあまりに芸がないし、日本盛としてのブランド性とか季節感も必要なので、ひとつは日本盛のレギュラー商品のラベルのモチーフにもなっている桜を、もうひとつには冬の花ということで牡丹をあしらいました。
ちなみに、本来、清酒は濾過の際に木灰が使われてまして、中でも牡丹の木灰が最高なんだそうです。ついでに言うと牡丹は春の季語だったりしまして、その辺厳密に言い出すとまぁなんだわねとうだうだしちゃいます。
また、色面のパターンは左の純米吟醸から順に、「風に吹かれる稲穂」「流水」「雲」でして、これらはすなわち「地」「水」「天(空)」ということで、清酒が自然の恵みから産み出されることの象徴だったりしてます。
 

 
セットの左肩につくお飾りもやらせていただきました。ラベルで使った3つの自然のモチーフと、吉祥である「松」「竹」「桐」を組み合わせてます。「桐じゃなくて梅のほうが目出たいやんけ」という意見もありますが、それやっちゃうとメーカー的にもいろいろあるのでここでもまたなんだわねと(本当のところは、なぜこの3つにしたのかは忘れてしまいました。ついこの前のことなのに)。
ただ実際、お目出度いから鶴亀を使おうとか、着物にも多く使われてるから菊を使おうとか、なかなかそうもいかないというのも実情ではあるんですよ。ギフト商品だからって、決して安易に十二単調の派手なあしらいやっとけば一丁上がりだあ、ってわけでもないんですわ。
 

 
さてこの商品、「招福セット」と名付けられて、上のような箱に入って販売されました。この箱とゆーか、蓋のデザインは別の方がされました。色数に制限のある中、ラベルのモチーフを使って、巧くまとめていただいたと思います。
ただ、個人的にはセンターの商品名のバランスがよくないような気がしないでもありません。
 

 
僕だったら、こんなふうとか(で、商品名の組みを、3mmくらい下げるかな)、
 

 
こんなふうにしたと思います。あくまでも僕だったら、ということで。とはいえ、僕がもし蓋までデザインしたとしても、そもそもの基本デザインが浮かばなかったかもしれませんし。
まあ、蛇足というか、大きなお世話ということで、デザインなんて細かいとこも含めるとどんなふうにも拡げられるんだ、くらいに捉えてくださいませ。