雑駁記——藤沢図案制作所——

ざっぱく【雑駁】(名・形動) 雑然としていて、まとまりのないさま。「_な知識」「文明の_なるを知らず、其動くを知らず」〈文明論之概略諭吉〉

野村万作 萬斎 狂言会 第十五回

5月19日、19:00開演 大槻能楽堂にて
 
忙しさから疲れもあったんだけど、チケットとってたから行かざるをえない。
おまけに生憎の雨。
こうした観劇は、和服を着てゆとりを持って出かけたいものなのですが。 
 
 
舟渡聟(ふなわたしむこ)
聟/野村 萬斎  船頭/野村 万作  女/石田 幸雄  後見/高野 和憲
 そもそも、新婚の夫が初めて舅の家に挨拶に行くことを「聟入り」と言うそうな。
 手みやげに酒を持って聟入りに出向く聟が渡し船に乗ったところ、
 その酒に目をつけた船頭が無理矢理飲ませてもらうちにすっかり空 にしてしまう。実はその船頭とは…ってお話。
 舅と聟の謡で締めなんだけど、ともあれ仲直りしてめでたし、ということだそうな。
 しかしまあ狂言に出てくるキャラクターのなんとも欲望に忠実なこと。
 そこに共感できてしまうから、今見ても楽しめるのでしょう。
 
芸話 野村万作
 万作さん、この日はひょっとして体調良くなかったのでしょうか。
 演じているときは全く気にならなかったけど、芸話のときはなんだか声を出し辛そうでした。
 話題は、中国をはじめとした海外に狂言を紹介したときの話と、
 次の曲「三人片輪」の紹介。
 
三人片輪(さんにんかたわ)
偽唖/野村 萬斎  有徳人/野村 万之介
偽座頭/高野 和憲  偽躄/深田 博治  後見/岡 聡史
 躄は「いざり」と読みます。
 身体の不自由な者を大勢召し抱えようという奇特な有徳人(お金持ち)のもとへ、
 食い詰めた博打打ち三人が身障者のふりをして雇ってもらうのだけれど…というお話。
 かつては頻繁に舞台にかけられたそうですが、せちがらい昨今はなかなか演じる機会が減った曲だそうです。
 タイトルからして無粋な人から文句言われそうだもんなあ。
 ストーリーの流れはオーソドックスなもので、特に後半のドタバタはドリフのコント並みに楽しい。
 それを笑ってしまうところが不謹慎だ、というのがこの手合いのネタの肝でしょう。
 不謹慎ネタってのは、タブーに抵触する緊張感と緩和のせめぎあいから生まれる笑いがあるわけで
 その意味では良識のある人の方が一層楽しめるのではないでしょうか。
 こういうのって、ある意味お笑いのスタンダードの一つだと思うのですけど。